よれよれ将軍のよれよれ日記

日常のことをよれよれと書く日記です。

肘を入れろ!

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今日はちょっと真面目にヴァイオリンに関する話を書こうと思います。

っつっても、ヴァイオリン本体に纏わる面白話ではなくて、

左手(腕も含む)のフォームという地味な話題についてです。

地味な話題ではあるものの、この左手のフォーム一つで、

アルペジオや重音の弾きやすさ、速いフレーズでの音程の安定度が

劇的に変わりますので侮ってはいけません。

※個人の感想です 効果には個人差があります

と、まるで私が左手のフォームをマスターしたかのように書いてますが、

そうではなくて、最近私が体験したことや自分なりに分析したことのメモみたいなものです。

きっと生涯マスターすることなんて無いんでしょうし、

日々発展途上でございます。

そんな私の気付きが、左手のフォームで悩んでいる方の一助になれば幸いですし、

ならなかったとしても何の責任も取りません!

ここで紹介する左手のフォーム自体は、

基本的には多くの教本に載ってる内容と同じだと思います。

今回の記事は、そのフォームで弾く理由や仕組みを、

なるべく分かりやすく理屈で説明しようという試みです。

というわけで、左手劇場の始まり始まり。

まずは左手の開き方について。

開き方には大きく分けて下記の2種類の方法があると思います。

便宜上、横開き、縦開きという名称を使います。

横開き

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指の股を文字通り横に開く方法です。

縦開き

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指の股を開くのではなく、

指の付け根の関節(第三関節?)を使って

人差し指をやや手の甲側に引き、

小指を手の平側に押し出すことで縦に開く方法です。

さて、ヴァイオリンを弾く時の左手はどちらなのか?

ちなみに、ギターの場合はフォーム次第でどちらも使う気がします。

ポールギルバートの真似とかしてると、

横開きの限界に挑戦!みたいなこともあって、

「指が届かない」→「もっと指を開こう」という思考の結果

横開きを意識してしまうのが人間というものです。

だがしかし!

ヴァイオリンに関しては、基本は縦開きになると思います。

っていうか、縦開きじゃないとこの後の話が続かないので、

縦開きが正しいものとして話を展開させますよ!

一応、「なぜ横開きでは弾けないのか?」について

私なりの考えを述べます。

まず、横開きは、全ての指がある程度伸びていないと

その真価を発揮できません。

さらに、指の付け根が曲がっている状態だと、

関節の仕様上、指はほぼ開かなくなってしまいます。

試しに、手を横開きにしてから、指の付け根を曲げてみてください。

(指の第1、第2関節は伸ばしたまま、拳を作るような感じ)

全然横に開きませんよね?

実際にヴァイオリンを持って構えてみると分かると思いますが、

純粋に横開きのみで指板を抑えようとすると、かなりの無理を感じると思います。

なので、楽器を弾いてる最中の皆さんは、

例え意図していなくても縦開きを使っているんだと思います。

普段は無意識に縦開きで弾いていて、

指が届かない時だけ、思い出したように横開きを意識してしまう、

そんな方が多いんじゃないでしょうか。

ヴァイオリン演奏に於いては、横開きはあまり役に立たないので

縦開きをマスターしようぜ!ってのが私の見解です。

さあ、満場一致で縦開きが採決されたところで、

左肘の位置について語りたいと思います。

何故かって?

縦開きを存分に使うためには左肘の位置がとても重要なのです。

まず、ただ単に左肘を曲げた状態で

ヴァイオリンを構えたようなポーズを取ってみます。

左手首は真っ直ぐですよ!

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これだと、人差し指の先から小指の先を結ぶ直線が、

地面と平行になりません。

小指側が下がってますよね。

このままだと指板を押さえるのにちょっと都合がよくありません。

そこで左肘をグッと中に入れます。

肘を自分のみぞおちに近づけるイメージです。

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すると、4本の指先が比較的真っ直ぐになります。

こうなると指板を押さえる際にもスムーズに行くと思います。

縦開きで弾くための第一歩は、

ヴァイオリンを構えた際に、

手の甲が向こう側を向いていて、

手の平が自分側に向いた状態をキープすることです。

手首を巻き込んで、手の平をネック側に向けるのはNGです。

(多少は良いと思いますが)

ここで注目すべきポイントは、

縦開きの場合は、「指の開き」というよりも「指の曲げ伸ばし」によって

音程を調節するという点です。

人差し指はポジションの基準となる場所に置くため、

人差し指を曲げ伸ばしすることはあまりしません。

中指を例に挙げてみます。

人差し指を基準のポジションに置いた上で

低い音(人差し指に近い音)を押さえる時は

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中指の付け根は伸ばし、第1、第2関節を曲げます。

高い音(人差し指から遠い音)を押さえる時は

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中指の付け根を曲げて、逆に第1、第2関節を伸ばします。

(手首の角度が変わってるように見えるのは気のせい!)

基本的には人差し指以外の指については、

この方法で音程を調節します。

小指で高い(人差し指から遠い)音を押さえる場合には、

小指の付け根を目一杯曲げて、思いっきり自分の方向の伸ばすイメージです。

開くんじゃなくて伸ばす(付け根は曲げて)とイメージした方が良いと思います。

小指が届かない場合等に、手首を曲げたり回転させたりして

指を届かせようとするのは、縦開きが出来ていない証拠です。

(物理的に届かない距離であるケースは除外するとして)

この縦開きがちゃんと出来ているかどうかの確認には、

G mollアルペジオを弾いてみると良いです。

っていうか、このG mollアルペジオを弾くために

左手のフォームを研究してたら、

今回の記事を書くきっかけとなった気付きを得た次第です。

G線の開放から始まって

ソ(G0)→シ♭(G2)→レ(D0)→ソ(D3)

※()内は弦と指番号

と弾いてみましょう。

2の指でG線のシ♭を押さえたまま、

D線の開放を弾き、そのまま3の指でD線のソを押さえます。

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おそらくですが、多くの方が普段の弾き方で

このG mollを弾こうとすると、

G線を押さえるために手首が回転してしまい

手の平が若干ネック側に向いてしまうと思います。

すると何が起きるか?

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指の角度が、弦(ネック)に対してかなり斜めになってしまい

3の指でD線のソを押さえようとしてもソよりも低い位置を押さえてしまいます。

先ほど書いた通り、縦開きでは音程を指の曲げ伸ばしで調節します。

正確なソを押さえるには、3の指を伸ばす(付け根は曲げる)必要があるのですが、

手の平がネック側に向いているせいで、3の指はG線方向に伸びてしまいます。

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結果、指の曲げ伸ばしだけではソを押さえることができず、

手首を曲げたり、回転させたり、2の指を離してから腕の角度を変えたりと言った

急場しのぎを使う羽目になります。

これは縦開きがちゃんと出来ていからだと私は考えるのです!

これを解決するためにはどうしたら良いのか?

それはG線を弾く時にも、手の平をネック側に向けず、

あくまで手の平は自分側に向いているという

縦開きの基本を守ることです。

ではそれを実現するためにはどうしたら良いか?

それは、前述の「肘をみぞおち側に引き寄せる」ことです。

肘を思いっきりみぞおち側に引き寄せると、

手の甲は向こうを向いたまま、

手の平は自分側を向いたまま、

G線を押さえることができます。

するとG mollもこのように

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自然に3の指を伸ばすだけで

D線のソを押さえることができるようになります。

※写真の角度自体が違うじゃねえかってツッコミは勘弁してください

 全く同じ角度から撮るのが中々難しくてね

このG mollが指の曲げ伸ばしだけで

きっちり弾けるようになったらしめたものです。

それは何故かというと、多分これが一番弾きにくいからです。

高い弦になるほど、肘をみぞおち側に引く度合いは少なくてすみますし、

ハイポジションになるほど、音程に対する指の曲げ伸ばしの距離は短くなるので、

正直、縦開きがちゃんと出来てなくても弾けてしまったりするのです。

だからこそ、ハイポジションでもちゃんと縦開きをキープするのが

難しかったりするんですけどね。

ちなみに、ハイフェッツ五嶋みどりさん(ハイフェッツにさん付けするのは何か違和感)の

演奏姿を見ると、左肘をものすごく内側に入れてますよね。

あれは、この縦開きを充分に機能させるためのものに違いない!

この縦開き&肘入れで全ての問題が解決するとまでは言いませんが、

演奏の安定度はかなり向上すると思います。

その理由は、縦開きがちゃんと出来ていないと、

弦を押さえる度に、手首の角度を変えたり、手を回転させたりするせいで、

左手がバタバタしてフォーム自体が安定しないからです。

もっと言うと、同じD線のソを押さえるのでも、

曲によって、もしくは前後の音との都合によって

左手のフォームが変わってしまうということです。

それはつまり、「毎回違う方法で音を取る」ということになります。

スケール練習をしてる時と、曲を弾いてる時で

左手のフォームが変わってしまうようでは

スケール練習の効果も半減ってものです。

逆に言えば、縦開きがちゃんと出来れば、

ソを弾く時には毎回同じフォームで弾くことができます。

スケールを弾く時だろうと、曲を弾く時だろうと、

常に左手のフォームは同じです。

ソを弾くフォームを一度体が覚えてしまえば、

それをあらゆる場面で流用できるということです。

理論上はね。

スケールやアルペジオの練習が大事なのは、

決まった左手のフォームで、あらゆる指であらゆる音の押さえ方を

体に覚えこませれば、どんな曲にもそれが応用できるからです。

理論上はね!

左手のフォームが変わってもちゃんと弾けるぜ!って人は別に良いんですが、

私のようにおっさんになってから楽器を始めた

レイトスターターと呼ばれる人種は、

技術も未熟だし、音感もイマイチだしで、

不安定要素を人一倍抱えています。

分かりやすい理屈で不安定要素を取り除けるのであれば、

それに越したことは無いってもんです。

と、良いことづくめかのように見える縦開き&肘入れですが、

一つ欠点があります。

それは、棘下筋(きょっかきん 肩甲骨の下側の筋肉)

に対してものすごく優しくないということです。

特に大人になってから急にこのスタイルを取り入れると、

棘下筋がビキビキになってしまいます。

練習中にもこまめに棘下筋のストレッチをして、

肩を壊さないように注意して練習しましょう。

ストレッチをしないと四十肩まっしぐらよ!

棘下筋のストレッチ方法はググって!

というわけで、以上が私の考える

縦開きのススメでした。

というわけで、この記事が世のレイトスターターさん達にとって

少しでも役に立ったら良いな。