よれよれ将軍のよれよれ日記

日常のことをよれよれと書く日記です。

出会いと別れ

私が初めて自分のヴァイオリンを買ったのは、

2005年12月2日でした。

もう、今から約7年前になりますね。

友人から借りたヴァイオリンで10ヶ月ほど練習を続けてきた私は、

7年前のあの日、自分のヴァイオリンが欲しくなり、

「どのくらいの予算でどのくらいの楽器が買えるのか?」を知りたくて

お店に伺ったんです。

予算の検討に来たはずが、

結局その日の内に買ってしまったのがこの楽器でした。

※写真は2012年撮影のもの

音もさることながら、見た目の圧倒的な美しさに惹かれたのが正直なところです。

この楽器を買ってから、私はヴァイオリン練習に本気を出したんだと思います。

いや、本気になったからこそ買ったのかも知れません。

毎日出勤前に朝練をするようになりました。

当時は6時に起きて、マッハで朝飯を食べて

2時間は練習するのを習慣にしてました。

当時はとにかくヴィブラートを上手くかけたくて、

2時間の練習の内、1時間はヴィブラートの練習のみに充てていた記憶があります。

メトロノームに合わせて左手を動かしたり、

そもそも手首を動かすのか、腕ごと動かすのかで悩んだり、

色んなDVDやら動画を見ては、どの演奏家がどんなスタイルで

ヴィブラートをかけているか日夜研究したものです。

通勤中や仕事中も、事あるごとに左手の指の第一関節を

ペコペコさせたりもしてました。

自分で書いてて懐かしい。

ヴィブラートさえ上手くかければ、

良い音色が出せると思っていた時期でした。

今思えば、本当に偏った考え方でしたが、

これが若さというものです。

ヴィブラートがそれっぽくできるようになるのに、

2年くらい要した気がします。

それっぽくできるようになってからも、

練習してる内に、少しずつ少しずつ進化してる感触はありました。

1年前と現在とを比較しても、きっとヴィブラートのかけ方は違うと思います。

ヴィブラートばっか練習してたせいで、

スケール練習や曲の練習が疎かになりがちでした。

それでも自分なりに必死に練習して、

何とか曲もそれっぽく弾けるようになってきました。

ある時、教室の先生に薦められて、

カヤレイ先生の公開レッスンの聴講に行きました。

そこで聴いた、カヤレイ先生のヴァイオリンが紡ぐ音色は

それはそれは衝撃的なものでした。

良い音色を出すのに重要なのは、

左手よりも右手(ボウイング)であるという事実を叩きつけられました。

自分の中の、ヴィブラート原理主義が粉々に砕け散った瞬間でした。

それからというもの、またDVDや動画を漁り、

自分の好きな演奏家が、右手をどのように使っているかを

よく見るようになりました。

現在はyoutubeで色んな演奏家の動画が見られますが、

それ以上に私は「The Art of Violin」のDVDをよく見ました。

もう今までに100回以上見てるかも知れません。

このDVDには本当にお世話になっています。

技術的な研究をさせてもらっているのはもちろん、

偉大な演奏家の皆さんの演奏シーンを見ているだけで

テンションが上がります。

見れば見るほどヴァイオリンを上手く弾きたいという

思いが高まります。心の栄養剤としても大活躍です。

ヴァイオリンを始めたての頃は、DVDを見て

ハイフェッツすげー!」

とか思ってましたが、その凄さは全然分かってなかったと思います。

数年の練習を経て、多少なりとも弾き方や

音の感じ方等を学んだ今、

改めて「The Art of Violin」を見ると、

以前思っていた以上に、彼らが遠い存在であることを感じます。

確実に近づきはしたはずなんですが、

精神的な距離は広がってしまいましたw

日々、自分の腕の未熟さを思い知り、

自分の腕を磨けば、楽器はもっと良い音を奏でてくれると信じて、

少しずつ練習を重ねていきました。

自分なりに、良い音が出せるようになってきたという

自信も多少付きました。

気づけば7年強が経過し、

思い返せば結構色んな場面で演奏をしたものです。

教室の発表会で独奏や合奏をしたのはもちろん、

同門の生徒さんの結婚式の二次会でカノンを弾いたりもしました。

当時はまだへっぽこだったため、

演奏が簡単な幻の「第4ヴァイオリン」パートを弾きました。

第4には大好きなあのフレーズが出てこなくて、

少し悔しかったのを覚えていますw

会社の朝礼でスピーチ代わりに演奏したりもしました。

何の縁か、みなとみらいホールで演奏する機会にも恵まれました。

つい先日、会社を去る同僚のために

会議室で演奏したりもしました。

様々な場面で、この楽器を弾きました。

今年の2月で丸8年となる私のヴァイオリン歴の内、

7年をこの楽器と過ごしてきました。

私は、自分で初めて買ったこの楽器が大好きでしたし、

何の不満もありませんでした。

一生この楽器を弾き続けるんだろうと思ってました。

ところが、つい先日のこと。

ふと、本当に突然ふと、

「もっと良い楽器って、もっと良い音がするんだろうか?」

という疑問が湧いたんです。

私は何かに取り憑かれたように、

楽器屋さんにメールを書いてました。

「もっと良い楽器からどんな音が出るのか知りたい。

 買い替えるつもりは無いからね!」と。

これが危険な行為であることは自分でも分かってました。

試しに弾いてみて、良い音が鳴ることを知ってしまったら

絶対に欲しくなってしまうからです。

ある日の朝、私は会社を遅刻して楽器屋さんに行きました。

店主は、候補となるヴァイオリンを5つほど用意してくれてました。

順々に試奏していき、あるヴァイオリンを弾いた時、衝撃が走りました。

「こんなにも響きが違うものか……」

今まで自分が弾いてきた楽器が一気に霞んでしまうほど、

圧倒的な響きでした。

弾き始めた途端、あまりの響きに、

嫁(付き添いで来てた)と思わず顔を見合わせてしまったくらい。

その瞬間から、私はそのヴァイオリンに惹かれっぱなしでした。

しかし早まってはいけない!

響きが良いのは、きっとこの店の音響のせいだ!

と自分を鎮め、

「もう少し試奏させてください」

とお願いし、ひたすら試奏を続けました。

他のお客様の邪魔にならないように、

別室で試奏させてもらっちゃいました。

その日持参してきていた、自分の楽器とも弾き比べましたが、

やっぱり響きが全然違います。

調子に乗って、ドラクエの曲とか弾いてたら

職人さんに「今のってドラクエ2ですよね」とか言われて、

バレた!と、ちょっと気恥ずかしい。

いや別に恥じることは無いんですが、

知らないだろうと思って弾いてたら知ってたのでw

その日は気づけば3時間くらい弾いてまして、

「もうこんな時間じゃん!いい加減会社行かないと怒られちゃう!」

ってことで、急いで会社へ。

しかし、頭の中はもうあのヴァイオリンに支配されてました。

家に帰ってからもそわそわしっぱなしで、嫁に

「好きな子に告白しようか迷ってる男の子みたいだねぇ」

とか言われる始末です。

そんな私を見かねた嫁が、

「もしレンタル可能なら貸してもらって、

 普段の環境(自宅)でじっくり弾き比べろ」

とアドバイスをくれました。

店に確認したら一応レンタルは可能とのことで、

翌日早速借りてきました。これが先週土曜日の話。

自宅に良いヴァイオリンが2本ある光景とか滅多にないので

記念にパチリ

自宅で弾き比べても、差は明らかでした。

A線の響きがやや金属的というか、少しだけ気になったんですが、

弦を変えたり調整したり慣れたりで何とかなるだろうということで

気分は完全に購入モード。

週明けの火曜日に私は

「ヴァイオリンを購入するんで、1/17~18に有休もらいます」

と会社に申請して有休をゲット。

調整とかに時間かかるかも知れないし、

とりあえず2日休んじゃえみたいなノリで。

そして今日、1/17(木)

私は再度楽器屋に行きました。

改めて、他の楽器とも弾き比べをさせてもらい、

やはりあのヴァイオリンが一番良いという確認をし、

購入を決断しました。

旧ヴァイオリンは下取りしてもらうので、

柘植のパーツ(ペグ、テールピース、顎当て)を

旧ヴァイオリンから新ヴァイオリンへ移植します。

各パーツを外された旧ヴァイオリン

この、弦が張ってない状態のヴァイオリンって、

普通に生きてるとあまり見ない光景ですよね。

この写真ではちょっと見えにくいですが、

指板が削れて凸凹になってるんです。

「これは、たくさん弾いた証ですよ」

と言われ、7年の歳月を振り返ってしまい

少し泣きそうになりました。

そして裏板。

裏板のこの綺麗な杢を見るのが好きでした。

もうこの楽器が自分のものではなくなる、

もう家でこの裏板が見られないのかと思うと、

また少し泣きそうになりました。

各パーツともほぼサイズが合い、

パーツの移植は30分強くらいで終わりました。

G線のペグだけちょっと深く入っちゃってるんですが特に問題なし。

今日からこいつがマイ楽器になりました。

やっぱりこの柘植パーツを付けると、

楽器が映えますよねw

このパーツも大好きなんです。

そして裏板。

こちらも綺麗ですが、個人的には

旧ヴァイオリンのあの美しさには一歩及ばない感じです。

良いんです!これからは音で勝負です!

しかしまあ、

「買うつもりはない」

というセリフが前振りにしかなってない辺りが、

7年前と何一つ変わってなくて、

自分の変化の無さに愕然としますね。

今度こそ、これが一生ものの楽器になると良いなぁ。

もう「良い楽器弾きたい」とか言い出さないようにします。