蜘蛛の糸っていうお話、ありますよね。
芥川龍之介さんの書いたあれです。
あのお話を見かける度に、大きな疑問が二つ湧いてきます。
まず一つ目の疑問。
カンダタはどうするのが正解だったのか、ということです。
もしかしたら似たようなことを書いてる方も居らっしゃるかも知れませんが、
そんなこと知らん！
本編を要約すると
・カンダタは生前に悪いことをしてたから、死後地獄に落ちる
・この蜘蛛の糸は、カンダタが生前に助けた蜘蛛が垂らしているらしい
・カンダタは、この糸を登れば地獄から抜け出せるかも、と糸を登り始める
・しばらく登ってから下をみると、他の亡者どもも糸を登ってきてる
・多数の亡者の重さに糸が耐えらないかも知れないと不安に思ったカンダタは、
「この糸は俺のものだぞ！てめえらは降りろ！」
的なことを叫ぶ
・その瞬間、蜘蛛の糸はぷつっと切れ、カンダタは他の亡者ともども
地獄の底へ真っ逆さま
・蓮池からそれを見ていたお釈迦様が悲しそうな顔をする（これはどうでも良いけど）
こんな感じですよね。
これを見る限り、
他者を見捨ててでも自分だけ助かろうとしたことが、
糸が切れた原因のように読み取れます。
そこで一つ目の疑問に戻ります。
カンダタはどうするのが正解だったのか。
考えてみるものの、いまいちしっくり来るものが浮かびません。
というわけで、私の頭の中の妄想をご紹介します。
◆カンダタ アナザーストーリーその1
（前略）
糸をしばらく登ったカンダタが下を見ると、他の多数の亡者が登ってきている！
それを見たカンダタが言う。
「よーし、みんなで地獄から脱出しよう！途中で糸が切れても恨みっこ無しだぜ！」
こうして、カンダタとその他大勢の亡者は無事地獄から脱出できました。
それを見ていたお釈迦様は満面の笑みで、再び蓮池の周りを散歩し始めました。
めでたしめでたし
まず真っ先に思い浮かぶのがこれです。
これはこれで、カンダタかっけえ！って感じですが、
亡者全員を地獄から出してしまうこの方法はどう考えても欠陥がある気がします。
カンダタの見ている大勢の亡者は、
カンダタを試すための幻覚である説も否めませんが、
地獄の亡者全員を逃がそうとする心意気が良しとされるのかは難しいところ。
◆カンダタ アナザーストーリーその2
（前略）
糸をしばらく登ったカンダタが下を見ると、他の多数の亡者が登ってきている！
それを見たカンダタは、糸が切れぬ内に脱出しようと、無言のまま急いで糸を登り始める。
こうして、カンダタは無事地獄から脱出できました。
それを見ていたお釈迦様は満面の笑みで
（後略）
これは、「この糸は俺のものだぞ」と口にこそ出さなかったものの、
やっていることはオリジナル版と変わらない気がします。
お子様向けの倫理的観点から見るとこれはNGだと思われます。
しかしながら、思っていることを口に出すか出さないかで、
結果に大きな差が生じるという点は非常に現実に即していると言えます。
「疑っている内はまだしも・・・！ 口に出したら戦争だろうがっ・・・！」
というカイジの言葉が思い出されます。
◆カンダタ アナザーストーリーその3
（前略）
糸をしばらく登ったカンダタが下を見ると、他の多数の亡者が登ってきている！
それを見たカンダタは、隠し持っていたナイフを取り出し（歯でも可）、
自分が手で掴んでいるところよりも下の部位の糸を切断。
亡者どもは切断された糸もろとも、地獄の底へ真っ逆さま。
釈迦は
（後略）
これは上述のアナザーストーリーその2よりも、アグレッシブなお話と言えます。
口に出していないだけで、自分だけが助かる方法を
淡々と実行するマシーンのようなカンダタ。
これはこれでクールで惚れそうですが、
オリジナル版よりも凶悪になっている気がします。
◆カンダタ アナザーストーリーその4
（前略）
糸をしばらく登ったカンダタが下を見ると、他の多数の亡者が登ってきている！
それを見たカンダタは、
「おお、地獄から抜けだそうとする亡者のなんと醜いことか。
俺はあのように醜くはなりたくない。
地獄に落ちた者の最後のプライドすら無くすところだった。
俺は・・・！ 生前の悪をぼかさないっ・・・！」
と言い放ち、自ら糸を手放す。
地獄の底へと堕ちていくカンダタ。しかし次の瞬間、眩い光がカンダタを包み、
カンダタは地獄から脱出。
OR
カンダタは地獄の底で、最後まで鬼の拷問に耐え切ってみせる
釈迦
（後略）
普通に考えるとこれが正解なのかなという気がします。
まあ、こういう話もありがちですよね。
これの後者のバージョンは救われませんけど。
ただ、カンダタが糸を離して落下すると、
もれなく下の亡者にフットスタンプ状態なので、
現実でこれを実行するのは困難だと思われます。
というわけで、色々考えてみたものの、
実はカンダタはどう頑張っても
助からなかったんじゃないのかという気がするのです。
「地獄に落ちるほどの悪人が、
蜘蛛一匹助けただけで助かるわけねえだろ！バーカバーカ！」
というメッセージが聞こえてきそうですね。
要は、生前に悪いことをするなということです。
ごもっともー。反論の余地も無いわ。
大分長くなりましたが、第二の疑問。
それは、糸を切ったのは誰なのかということです。
考えられるのは
・釈迦
・蜘蛛
・釈迦より上位の存在
の三択くらいじゃないでしょうか。
第一の疑問と相まって、糸を切った犯人はかなり悪趣味だと思ってしまいます。
一度希望を見せておいてからの絶望！
最初から絶望しっぱなしより質が悪いんですよね、こういうの。
なんでこんなことを真面目に長々と語ってるかと言われると、
自分が地獄に落ちた時のイメトレですよイメトレ。
私くらいになってくると、多分タランチュラ10匹くらいが
極太の糸を垂らして助けに来てくれるでしょうから、
罪人の数千人くらい余裕ですきっと。
その点は問題無いのですが、
私がどう行動するのが正解なのか、
その答えが見つからないのです。
